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長井まちあるき物語 まるはち酒店

山形県長井市。それは、水と緑と花の奥座敷・・・・・
ゆっくりと まちなみに ふれてみませんか・・・・・
魅力あふれる 深い建物を醸し出す風景に 足を運んで下さい

(資料:長井市史、神奈川大学工学部建築学科 西和夫 長井市歴史建造物調査報告書、文教の杜)


  まるはち酒店は、昭和13年創業で現在も酒店として営業しています。建築年代は創業と同時期とされ、御当主からの聞き取りによると「昭和初期に私の祖父が建てた」とのことです。22年くらい前に現在の状態に改修したが、柱などは動かさず、間取りもそのまま。建築様式から見ても昭和13年頃として矛盾がありません。
  店舗外観は、木造2階建て、入母屋造りの南面に切妻造りの屋根が接続しています。また西面には木造平屋建て、切妻造りの主屋が接続します。屋根は鉄板葺き。入母屋造の店舗北側は、軒先下に板を打つ洋風意匠ですが腰を下見張り、上部を白漆喰仕上げとする和風の意匠を見せています。店舗南側の軒先下は垂木(たるき)と野地板を見せる和風の意匠です。2階の建具は木製建具で、2階部分は外観、建具ともに当初のままとのことです。現在1階道路側は塗り込められ入口が半間下げて設けられていますが、これは近年の改修であり、かつて道路面に対して木製建具が入り、すぐに店に入れたとのことです。その様子は古写真からも確認できます。東面南側にはかつて主屋に繋がる玄関でしたが、現在は屋根のみ残っています。
  間取りは、東に店があり、西へ客間、寝室、茶の間、台所と続きます。店は、床・壁・天井ともに新建材で覆われていますが、構造はそのまま残っており、柱位置もそのままです。南側半間はかつて主屋へ繋がる玄関、土間でありそこから主屋へ出入りしていました。客間は6畳で、壁は砂壁。天井は敷目板張りですが、これは近年の改修によるものです。北面及び西面は7寸成(セイ・縦方向の寸法)の差物を使い、建具は腰板付き障子戸。南には現在簾戸(すど)が建てこまれていますが、本来は北面、西面同様の建具を建てていたとのことです。茶の間は10畳で西面中央に仏壇を置き、北側上部に神棚を置いています。壁は砂壁、天井は敷目板張り。茶の間はかつて8畳で、西側半間は廊下、もとは突き当たりに便所がありました。廊下と部屋境には他と同じく腰板付き障子戸が入っていました。柱は3寸6分角、設計基準寸法は1間を6尺3寸とする芯々設計です。
  2階は客間、4畳半、10畳の3室。客間は8畳で北面に1間幅のトコ、脇に地袋付きの棚があります。トコの壁は、黒砂壁、棚の北面は開口部としガラス戸が4本入っています。天井は棹縁(さおぶち)天井。壁は白漆喰仕上げ。
  店及びその西に続く主屋は改修が加えられているが、構造体はそのままであり、建物の配置は典型的な構成(店が道路に平行で主屋はそれに直行する)となっています。この地域の屋敷構えの様子や全体構成をよく示しており、昭和期に入ってもこの構成が踏襲されていることを示す点で貴重な存在です。

2014.04.30:[歴史的建造物]
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